留岡和重

 留岡 和重(とめおか かずしげ)

 

研究の内容:

隕石や宇宙の塵は,今から約46億年前に太陽系が形成され始めたころつくられたものです。それゆえ,これらの物質は,太陽系生成期の様々な情報をその中に秘めています。私は,そのような隕石や塵を主に電子顕微鏡を使って調べ,太陽系創成の謎を解き明かそうとしています。隕石や塵は小惑星や彗星からやってきます。私は,小惑星や彗星が形成され,成長して行く過程で起こったと思われる様々な現象(水,熱,天体衝突による物質変化)を,実験的に再現する研究も行っています。このような宇宙物質の精密な観察・分析,そして実験的研究を通して,太陽系の起源および惑星の形成・進化に関する様々なプロセスを,できるかぎり正確に理解することが私の目的です。

現在特に興味を持っていること:

炭素質コンドライトという隕石は,46億年前の原始太陽系星雲中にあった固体粒子が集まってできた,最初の小天体(微惑星)のかけらだと考えられています。ですから,この隕石は,微惑星が原始星雲からどのように形成されたか,そして,その後どのように成長・進化して行ったかを知る上で貴重な情報源です。

最近私達は,幾つかの炭素質コンドライトから,大規模な破砕による粒子の形成・移動・混合があったことを示す多くの証拠を発見しました。このことは,星雲物質が集積して炭素質コンドライトの母天体が形成されたあと,その母天体の中で,大規模な物質の破壊,運搬,再集積があったことを示唆しています。炭素質コンドライトの母天体でそのようなプロセスがあったことは,過去に議論されたことはほとんどありません。私は現在,その母天体プロセスとは一体どのようなものであったか,隕石にどの程度普遍的なものであったかを明らかにすることに心を奪われています。

主要研究テーマ:

  • 原始太陽系星雲ではどのようなことが起こったか。
  • 微惑星はどのようにつくられ,成長・進化して行ったか。
  • 小惑星,彗星とは何か。

この科学の将来性:

21世紀は宇宙探査の進展とともに,太陽系のさまざまな天体を直接調べることのできる時代になりつつあります。それにともなって,宇宙は私達にとってますます身近な,「手に取って調べることのできる」対象となって行くでしょう。近い将来,「宇宙は顕微鏡で調べるもの」という考えが常識になるかもしれません。私は,今後この「物を通して宇宙を探る科学」の重要性,そしてこの科学への社会的関心はますます大きくなって行くと思います。ちなみに,現在日本とアメリカで計画されつつある,次期小惑星サンプルリターン探査「はやぶさ2」(2014年打ちあげ,2020年帰還予定)と「オシリス・レックス」(2016年打ち上げ2023年帰還予定)は,両方とも炭素質コンドライト型の小惑星を目指しています。10年後は,炭素質コンドライトが世界の人々の関心の的になるのではないかと予想しています。

研究室で大事にしていること:

科学研究では,創意・発想が何よりも重要です。私は,優れた創意・発想は自由な伸び伸びとした環境の中でこそ生まれてくると思っています。研究室では,教員・学生が各々自由に自分のやりたいことに専念でき,また互いに同じ目線で気楽に話し合える雰囲気を大事にしています。

なぜこのような研究をやることになったか:

私は大学院生のころ,鉱物を合成し,その結晶構造をX線回折法を用いて調べる研究を行っていました。それは宇宙とは全く無縁のことでした。しかしそのころ,将来は鉱物の研究で得た知識と経験を生かして,何かまったく新しいことに挑戦してみたいと思っていました。それで,大学院修了後アメリカに渡り,隕石を電子顕微鏡で研究することを始めました。

宇宙には以前から興味を持っていましたが,望遠鏡や計算のような間接的手法ではなく,もっとダイレクトに,具体的に調べてみたいと思っていました。隕石や宇宙の塵に興味を持ちはじめたのはそういう思いからです。隕石はちょっと見ると,ただの石ころに見えますが,そこには宇宙創成に関する無限の情報が詰まっています。なんとも形容し難いほど魅力的な対象です。隕石を研究するうちにそのことに気づかされ,しだいにとりこになっていきました。

略歴:

1980年  東京大学大学院理学研究科博士課程修了
1980年  アリゾナ州立大学地球科学科ポスドク研究員
1987年  東京大学理学部助手
1992年  神戸大学理学部助教授
1993年  神戸大学理学部教授

受賞・顕彰:

1998年 Meteoritical Society Fellow
2003年 日本鉱物学会賞
2011年 地球化学研究協会学術賞「三宅賞」
2014年 日本学術振興会 科研費審査への表彰

最近の主要論文10選:

  1. K. Tomeoka and I. Ohnishi, Redistribution of chondrules in a carbonaceous chondrite parent body: A model, Geochimica et Cosmochimica Acta, 164, 543‒555 (2015).
  2. K. Tomeoka and I. Ohnishi, Olivine-rich rims surrounding chondrules in the Mokoia CV3 carbonaceous chondrite: Further evidence for parent-body processes, Geochimica et Cosmochimica Acta, 137, 18–34 (2014).
  3. M. Matsumoto, K. Tomeoka, Y. Seto, A. Miyake and M. Sugita, Nepheline and sodalite in the matrix of the Ningqiang carbonaceous chondrite: Implications for formation through parent-body processes, Geochimica et Cosmochimica Acta, 126, 441−454 (2014).
  4.  A. Takayama and K. Tomeoka, Fine-grained rims surrounding chondrules in the Tagish Lake carbonaceous chondrite: Verification of their formation through parent-body processes, Geochimica et Cosmochimica Acta, 98, 1−18 (2012).
  5. K. Tomeoka and I. Ohnishi, A hydrated clast in the Mokoia CV3 carbonaceous chondrite: Evidence for intensive aqueous alteration in the CV parent body, Geochimica et Cosmochimica Acta, 75, 6064−6079 (2011).
  6. K. Tomeoka and I. Ohnishi, Indicators of parent-body processes: Hydrated chondrules and fine-grained rims in the Mokoia CV3 carbonaceous chondrite, Geochimica et Cosmochimica Acta, 74, 4438−4453 (2010).
  7. K. Tomeoka, N. Tomioka and I. Ohnishi, Silicate minerals and Si-O glass in Comet Wild 2 samples: Transmission electron microscopy, Meteoritics & Planetary Science, 43, 273−284 (2008).
  8. I. Ohnishi and K. Tomeoka, Hydrothermal alteration experiments of enstatite: Implications for aqueous alteration of carbonaceous chondrites, Meteoritics & Planetary Science, 42, 49−62 (2007).
  9. N. Tomioka, K. Tomeoka, K. Nakamura and T. Sekine, Heating effects of the matrix of experimentally shocked Murchison CM chondrite: Comparison with micrometeorites, Meteoritics & Planetary Science, 42, 19−30 (2007).
  10. K. Tomeoka and D. Itoh, Sodium-metasomatism in chondrules in CO3 chondrites: Relationship to parent-body thermal metamorphism, Meteoritics & Planetary Science,39, 1359−1373 (2004).